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アート

東海歴史散策

歴史的な場所がだんだん開発の波にのまれうしなわれていく今日。
草むらに、ビルの谷間に、忘れられたようにひっそりと存在感をなくしている。
東海地方は史跡の宝庫。記憶に残っているものを少しでも多く紹介することが
大切という思いからメールマガジンで紹介し続けている。
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過去の記事一覧

1.哀話の坂道、からたちの砦の坂道

2.陶器と美濃源氏と化石植物の里

3.海賊大将軍のふるさと

4.戦国軍師が眠る美濃一の宮

5.大神に仕えるイツキノミヤ

6.神代の生活を守る幻の大和民族「山窩」

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舞い散る枯れ葉と神々の衣ずれの音

 
三重県伊勢市


清冽な五十鈴川にたちこめる朝霧は、新しい年のため神々がはぐくんだものだ。

空の彼方で静かに夜明けを告げ、星に彩られていた幕がゆっくりと薄れて消え、年の初めを森に伝え始める。

そこは「常世の波が寄せる」という伊勢神宮の森。大和朝廷が、皇統の永遠を祈って定めた聖地である。

朝霧煙る内宮の宇治橋を渡って一の鳥居をくぐり、神への供物をすすいだところから名ずけられたという五十鈴川で身を清める。

千古の杉の緑におおわれる幾つかの神殿を仰ぎながらたどり着いた正殿は、二十余段の石段の幾重もの垣の奥にあった。そこに鎮座するのは、天照大神、つまり永遠を象徴する天照神の御魂の象徴、皇室の三種の神器の一つの神鏡である。

ここには、昔から、神宮と皇女を結ぶ斎宮がいた。天皇が即位すると皇女の一人が神宮に入って祭事を主宰する。退位すると都に帰り、新しい天皇の皇女がやってくる。これを斎宮と呼び、皇女と天照大神を結ぶ重要な役目をもっていた。

内宮に住む大神に、朝夕、常世の命のこもった食事を差し上げるためにできたのが外宮である。雄略天皇(456〜)の時代に丹波国から遷都された離宮で、すべての産業を守る神でもある。朝夕、昔ながらの木の摩擦で火をおこして神の料理を作る忌火屋殿を従えた外宮の正殿の庭には神鶏が遊び、いかにも食事所らしい雰囲気がある。

内宮、外宮と共に忘れてはならないのは、神域の地主神の土宮、風雨の神の風宮、神霊の活動をつかさどる多賀宮、井上水の上御井神社である。

伊勢神宮参詣の正面は二見浦で、勢田川から夫婦岩にいたる5キロの海岸線は、神宮へ参る人の精進粛斎の場であった。

伊勢は、神代の昔に通う道である。深夜月の伊勢路を歩いていると、林に舞う枯れ葉の音に、ふと神々の衣の触れ合う気配を感じたりする。



 

23.三河武士団と作手の里

25.木曽山岳の秘境権兵衛峠

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