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アート

東海歴史散策

歴史的な場所がだんだん開発の波にのまれうしなわれていく今日。
草むらに、ビルの谷間に、忘れられたようにひっそりと存在感をなくしている。
東海地方は史跡の宝庫。記憶に残っているものを少しでも多く紹介することが
大切という思いからメールマガジンで紹介し続けている。
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過去の記事一覧

1.哀話の坂道、からたちの砦の坂道

2.陶器と美濃源氏と化石植物の里

3.海賊大将軍のふるさと

4.戦国軍師が眠る美濃一の宮

5.大神に仕えるイツキノミヤ

6.神代の生活を守る幻の大和民族「山窩」

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雪国のきびしい湖に羽を休める白鳥たち
灘

 
新潟県


夜来、降り続いていた雪が、夜明けとともに地ふぶきに変わった。

地の底から吹き上げた風が、大地の雪を巻き込んで激しく舞い狂い、新潟平野の地平線を生もののように走る。それは雪国のきびしい自然が生み出したいぶし銀のような地上のオーロラ。じっと目をこらして見入っていると、この幻想のような風景のまえでは、北国の生活のきびしさも忘れてしまうほどだ。

長い冬の間、白というベールをかぶって眠り続けているような雪国でも.少し目をこらせば一日のわずかな間にも、つつましやかではあるが、新鮮な変化があるのがわかる。

五頭連峰を正面に望む水原の町は、新潟でもひときわ雪の深いところ。その町の名は、昔、近くの阿賀野川が氾濫し、このあたり一面がよく水の原っぱになったところからついた。

町はずれに美しいたたずまいを見せる瓢湖は、冬になるとここに白鳥が訪れるようになったのは昭和25年、それ以来やってくる数が年々増え、「白鳥の湖」と呼ばれるている。

北海の流氷を思わせる氷群がひしめく瓢湖。その間に深海のような青みをたたえた水面がのぞく。張りつめた氷原は深い雪にうずまり、けぶりたつように岸に向って続いている。

雪の五頭連峰を浮かび上がらせる湖のかなたの平野にはかすかな青みを伴った地ふぶきが舞い、狭い水面にひしめき合って、優雅な首をゆらめかせている。

遠いアジア大陸やシベリア方面からやってきた野性の白鳥たちは、思い思いの姿勢で瓢湖の日差しを楽しんでいる。

「北国の使者」「冬の霊魂」「雪の化身」と言われるだけあって、飛ぶその翼は優雅で神秘的であった。水面をけり、大きくはばたきながら滑走し、やがてひらりと空に浮かぶその姿は、おとぎ話に出てくる天女を思い浮かばせる。新潟平野に立ちつくしばがら、いたるところに立ち並ぶ稲を干すために植えられた木々が天をつくようにそびえていた。



 

42.西方浄土に続く熊野灘

44. 名古屋のシンボルシャチ輝く天守閣

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