こうしてむすめ歌舞伎を始め、続けてこられた櫻香さんにやりがいについてお尋ねしました。やりがいは年代によって変わるとのことでした。市川さんがまだ20代の頃、人が静かに自分の公演を見てくださることに、ドキドキしたそうです。その頃、ある公演を終えた日の話。帰りの受付で 「来年もこれを楽しみにまた1年生きることが出来る。」 と、財布を置いていかれた年配の方がいたそうです。自分の行ったことが、他人に対して生きる希望を与えた。このことは櫻香さんのやりがいとなり、大きな原点となったそうです。
そそして、今の櫻香さんがやりがいを感じられているのは、小さな気づきだと語られました。それは見ている人が泣いたり喚いたりといった大きな感動ではなく、静かに気づいてもらえることだそうです。 そしてまた、教えるということについてもお話がありました。インターネットの普及によって昔の『見て盗め』という時代よりも、多くの情報がインターネット上にはあふれています。そうした状況で、名人がたくさん生まれないのは何故なのでしょうか。 それは気持ちの問題では、と櫻香さん。1対1の指導で叱られ、上達せず悔しいと感じる負けん気、芸魂が薄くなってしまっているのではないかと。面と向かった1対1の指導こそが1番高等なものなのだそうです。
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